仔猫の飼い主さん、譲渡活動を行っているボランティアさん、「早期不妊去勢手術」という言葉をご存じですか?
現在日本では「不妊去勢手術は生後6カ月から」という考えが浸透しています。しかしアメリカでは「早期不妊去勢手術」という初回発情前に行う手術が広く普及しています。米国獣医師会では早期不妊去勢手術を、8~16週齢(2~4か月齢)の性成熟前(未発情の時期)に行われる手術であると定義しています。アメリカのシェルターでは少なくとも10年以上前から行われており、生まれても行き場がなく処分される猫や野外で生まれる野良猫を減らす『頭数コントロール』の手段として、非常に重要なものであると捉えられています。
しかし実はシェルターでの「頭数コントロール」としてだけではなく、飼い猫にとってもメリットだらけの手術であるといえます。
①病気の予防
雌では乳腺腫瘍や子宮蓄膿症、雄では精巣腫瘍や前立腺の病気などを予防することができます。
②手術時侵襲の抑制
幼齢猫は成猫と比較して血管が発達しきっておらず、手術時の出血量が少なく済みます。また、おなかの脂肪の量が少なく子宮を探し出すことが容易なため、手術時間や傷の大きさは格段に少なく済みます。
つまり手術時の猫への負担が圧倒的に少ないということです。実際、麻酔から覚めた仔猫は、何事もなかったかのように動き出します。この様子を見るたびに、早期不妊去勢手術のメリットをひしひしと感じるのです。
一方、獣医師の中には、早期不妊去勢手術に対して術後に起こるリスクを気にされる先生もいらっしゃいますが、実は、術後の身体的・行動的なデメリットは特にないという研究がきちんと発表されています。 外部リンク:Timing of neutering
また、獣医師の専門書にも次のように記載されています。
『以前は、早すぎる去勢は、発育不良・失禁・排尿障害・免疫力の低下・行動異常・肥満を招くなど、様々な合併症が生じると報告され、多くの獣医師に信じられてきた。
しかし近年では、生後3か月以前に去勢を行っても骨格成長などに影響はなく、ほとんど合併症も生じないと報告されている。
また、尿路閉塞のあるオス猫101頭と、閉塞のないオス猫101頭を用いた研究では、早期の去勢手術による発生率の差は認められていない。近年、米国ではワクチン終了直後に去勢手術を行う施設が増えてきている。このような背景から、麻酔が可能であれば生後6か月までのなるべく早期に去勢手術を行うことを推奨する。』
初心者のための小動物の実践外科学 枝村 一弥 先生(日本大学 獣医学科 獣医外科学研究室)著
当然、麻酔をかけて行うものですから、麻酔事故のリスクはありますが、それは年齢には関係ないものです。
また、大きくなるまで手術を待っているうちに妊娠してしまったという話も耳にします。
望まれず生まれてくるような猫たちを減らしたい、当クリニックはそのための最善で最良の方法であると考えています。仔猫を飼い始めた飼い主さん、ぜひ、早期不妊去勢手術をお考えください。
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